『なんで休んでたの?』が怖くて戻れない——不登校の子ども達の不安と支え方
- こまち先生

- 1 日前
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本記事を書いているのは『こまち先生』こと不登校解決支援センターRAY代表理事の辻です。

・復学支援カウンセラーとして親子関係の改善や復学支援に従事。
・SNSでは『こまち先生』として活動し、総view数は100万を突破!
不登校が長引いてくると、理由としてこんな言葉を聞くことが増えていきます。
「クラスの子になんて言われるか不安だから戻れない」「休んでいたことをいじられたらイヤだ」「行った日に『なんで休んでたの?』って聞かれるのが怖い」
ここまで来ると、多くのケースで「もともと学校に行けなくなったきっかけ」よりも、
長く休んでしまったこと
その結果としての“今の自分”
に対する不安や恥ずかしさが前面に出てきます。
今回は、こうした状態のときに何が起きているのか、そして家庭でどんな関わりを積み重ねる必要があるのかを整理していきます。
不登校の「理由」が途中で変わっていく
不登校のスタート地点には、さまざまなきっかけがあります。
勉強についていけなくなった
友達とのトラブルや、からかい・いじめ
部活や先生との関係
無気力や不安感の高まり
こうした「きっかけ」はもちろん大事です。
ただ、不登校の期間が1か月、3か月…と長くなってくると、多くの子ども達で、別のテーマが前に出てきます。
それが、
「長く休んでしまった自分で、今さらどうやって教室に戻るか」
という問題です。
具体的には、こんな不安が重なっていきます。
教室に入った瞬間、みんなに見られている気がする
「なんで休んでたの?」と聞かれたとき、何て答えたらいいのかわからない
自分の席がどこかも、時間割がどうなっているかも自信がない
“みんなは普通に過ごしている”と思うほど、自分だけ遅れている気がする
その結果として、
「学校に行った方がいいのはわかってる。でも、今さら無理」
という気持ちが心の多くを占めていきます。
この段階では、「元の原因(勉強・人間関係など)だけを解決する」では足りません。
子ども自身の「失敗・恥・遅れ」に対する捉え方
家庭での関わり方
この両方をセットで変えていく必要があります。
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「みんな気にしないよ」が届かない理由
この状態のお子さんに対して、親御さんからよく出てくる言葉があります。
「みんなそんなに気にしないよ」
「お友達はちゃんと受け入れてくれるよ」
「クラスの子たち、いい子ばっかりじゃない」
親として自然な反応ですし、お子さんを励ましたい気持ちから出てくる言葉だと思います。
ただ、残念ながらこの言葉かけは、ほとんどの場合、お子さんの心には届きません。
なぜかというと、子どもが恐れているのは
「現実に起こっている出来事」そのものではなく
「頭の中に何度も再生される“最悪のシーン”」
だからです。
たとえば子どもは、こんなイメージを繰り返し思い浮かべています。
教室に入った瞬間、シーンとして全員がこっちを見る
誰かがひそひそ話をして笑う
「メンタルやばくない?」と言われる
親御さんがいくら「そんなことないよ」「みんな優しいよ」と“現実情報”を足しても、頭の中のイメージは、簡単には上書きされません。
実際にクラスメイトから寄せ書きや電話をもらっても、この悩みが残り続けることが多いのは、そのためです。
むしろ、
「そんなこと気にしないでいいって」
「みんないい子だから大丈夫」
と繰り返されると、子どもは
「気にしている自分がおかしいのかもしれない」
と感じ、さらに自分を責めてしまうことさえあります。
本当に必要なのは「恥ずかしい自分」を見られる練習
では、何を解決していけば良いのでしょうか。
ポイントは、
「みんなは気にしていないんだよ」と説得することではなく
子ども自身が「恥ずかしいと思っている自分」を少しずつ見られるようになること
です。
認知行動療法(CBT)の考え方では、ざっくり言うと次のようなステップを踏みます。
頭の中に浮かぶ「最悪のシナリオ」を言葉にしてみる
例)「絶対に変な目で見られる」「必ずいじられる」
それが「事実」なのか、「そう思っている自分の予想」なのかを整理する
他の可能性を探してみる
「全員がそうだろうか?」
「誰なら違いそうか?」
「もしそう言われたとして、自分はどうしたいと思っているか?」
ここで大事なのは、「不安を消すこと」ではありません。
「不安を抱えたままでも、『自分はどうしたいか』を少し選べるようにしていく」
という視点です。
ACTの視点:不安を連れたまま「大事にしたいこと」に近づく
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)という考え方では、
不安や恥ずかしさを“無くす”のではなく
「自分はどう生きたいか」「何を大事にしたいか」を軸にします。
たとえば、お子さんが本音では
「本当は友達とまた笑っていたい」
「授業も受けておきたい」
と感じているなら、それが“その子にとって大事なこと”です。
このとき親御さんができるのは、
「不安がなくなったら行こう」ではなく「不安を抱えたままでも、友達と笑いたい自分を少し応援してみようか?」
という話し方に変えていくことです。
ACTでは、
不安をゼロにすることは目標にせず
「不安を連れてでも一歩踏み出す」練習を重ねていきます。
その一歩は、いきなり「教室に戻る」ではなく、
まずは一人の友達と会う
学校ではなく学校の近くまで行ってみる
オンラインで担任と話してみる
といった、小さな行動からで構いません。
関連:
RAYの不登校支援の考え方
家庭でできる3つのサポート
ここからは、家庭で今日からできる関わりを3つに分けてお伝えします。
① 気持ちの「言葉」を一緒に探す
いきなり
「どうして学校に行けないの?」
と聞かれても、多くの子どもは言葉にできません。
おすすめの聞き方は、例えばこんな形です。
「クラスの子になに言われるのが一番イヤ?」
「どんなことが起きたら、一番しんどい?」
そして、お子さんが少しでも言葉にしてくれたら、すぐにアドバイスに行かず、
「そりゃイヤだよな」「そう思ってるんだな」
と、一度そのまま受け止めます。
ここで、
「そんなこと気にしなくていいって」
「みんなそんなに考えてないよ」
と打ち消してしまうと、「どうせわかってもらえない」と感じて話すのをやめてしまうことが多いからです。
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② 「なんで休んでたの?」と聞かれたときのセリフを一緒に決めておく
次に、「なんで休んでたの?」と聞かれたときの答え方を、親子で一緒に考えてみます。
ポイントは、完璧な説明を目指さないことです。
例としては、
「ちょっと体調崩しててさ。でも今は大丈夫」
「いろいろあって休んでたけど、また来たからよろしく」
など、“子ども本人がこれなら言えそうだと思える一言”で十分です。
紙にメモしておいてもかまいません。
これはCBTの言葉で言えば、「不安な場面のリハーサル」です。
頭の中の「真っ白になって何も言えない自分」というイメージを
「少なくともこの一言だけは言える自分」
に少し入れ替えていく作業になります。
③ 小さな「失敗の練習」を家庭の中で増やす
学校に戻る前に、家庭の中で
「失敗しても大丈夫だった経験」
を少し増やしておけると、戻りやすくなります。
例えば、
約束の時間に少し遅れたとき
「ダメじゃないか」ではなく、「どうしようか、次はどうしたい?」と一緒に考える。
料理や手伝いで失敗したとき
「何やってるの」ではなく、「手伝ってくれてうれしいよ」と“関わってくれたこと”を認める。
こうした場面で、
「失敗しても関係は壊れない」
「恥ずかしくても、そばにいてくれる人がいる」
という感覚を少しずつ積み上げておくことが、教室に戻るときの土台になります。
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交換条件や「ご褒美」で動かそうとするとどうなるか
この段階で出てきやすいのが、
「○○してくれたら学校行く」
「新しいゲーム買ってくれたら行く」
といった“交換条件”です。
親御さんの不安が大きいと、
「それで本当に行けるなら…」
と応じたくなりますが、ほとんどの場合、安定した登校にはつながりません。
理由としては、
もともとの「失敗・恥への不安」には触れていない
一時的に行けても、つまずいたときに別の条件を出すようになりやすい
「嫌なことは、何かと交換しないとやらない」という学習が進んでしまう
といった点が挙げられます。
交換条件そのものを頭ごなしに否定するのではなく、
「本当に解決すべきなのはどこなのか」
「今の条件は、その子の不安を和らげる方向に働いているのか」
を一緒に考えていくことが大切です。
詳しくは下記の記事で事例を交えて説明しています。
よくあるご質問
Q1. 本人が「その話は一切したくない」と言います。それでも学校の話題を出した方が良いのでしょうか?
A. 一気に核心の話をする必要はありませんが、「一切触れない」が続くと、かえって不安が大きくなっていくこともあります。
まずは学校の話ではなく、
「最近、いちばんしんどい時間っていつ?」
「一日の中で、ちょっとだけホッとする時間ってある?」
といった、もう少し広い話題から始めてみましょう。
そのうえで、
「休んでたことをクラスの子にどう思われるか、不安なときもある?」
と “はい/いいえ” で答えられる質問に変えていくのがおすすめです。
本人が「少しなら話してもいいかも」と感じられる範囲を探っていくイメージです。
Q2. CBTやACTのような支援は、家庭だけでもある程度できますか?それとも専門家のカウンセリングが必須でしょうか?
A. 「基本の考え方」を家庭で取り入れることは十分できますが、本格的にやる場合は専門家と一緒に進めたほうが安全です。
家庭でできる範囲としては、
子どもの頭の中の「最悪のシナリオ」を否定せずに聞く
「それは事実?それとも、そう思っている自分がいるって感じ?」と聞いてみる
「本当はどうしていきたいか」を一緒に言葉にする
といったレベルでも、十分意味があります。
一方で、
トラウマに近い出来事がある
自責感が極端に強い
自傷や希死念慮が見られる
といった場合は、専門家によるアセスメントと介入が必要です。
RAYでは、こうした心理療法の考え方をベースにしつつ、「親御さんが家庭で実践できる形」に落とし込んで一緒に整理していきます。
関連:
Q3. すでに1年以上休んでいて「今さら戻れない」と言っています。それでも復学を目指していいのでしょうか?それとも別の進路を考えるべきでしょうか?
A. 「どちらが正解」という話ではなく、
本人がどう生きていきたいと思っているか
そのために「学校」という選択肢がどう位置づけられているか
を丁寧に確認することが第一歩です。
1年以上休んでいても、
「友達と笑っていたい」
「行きたい高校がある」
といった“前に進みたい気持ち”が少しでもあるなら、復学を目指す価値は十分にあります。
一方で、「今の学校に戻ること」だけがゴールではありません。
転校や通信制高校などの進路
フリースクールなどを併用した学び方
を含め、選択肢を広く見たうえで、
「この子にとって、どこで、どう学ぶのが一番良さそうか」
を一緒に検討していく必要があります。
そのためにも、家庭だけで抱え込まず、学校・自治体・専門機関とチームを組んで考えていくことをおすすめします。
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まとめ
不登校が長引いてくると、
最初に学校に行けなくなった「きっかけ」よりも
「長く休んでしまった今の自分で、どう戻るか」という問題
が前面に出てきます。
この段階では、
「みんな気にしないよ」と説得すること
「お友達はいい子だから大丈夫」と現実を説明すること
だけでは足りません。
必要なのは、
子どもが「恥ずかしいと思っている自分」を少しずつ見られるようになること
その不安を抱えたままでも、「本当はこうしたい」に向かって一歩を選べるようにすること
そのプロセスを、親御さんが“命令・指示・提案”ではなく、並走する形で支えていくこと
です。
ここを一緒に乗り越えたご家庭ほど、
復学後の継続登校
思春期以降の進路や人間関係の課題
にも強くなっていきます。
「うちの子も、まさに今この状態かもしれない」と感じた方は、一度第三者と一緒に整理してみることをおすすめします。
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