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私が大学生の頃、「不登校の子ども」と聞いた時に思い浮かべていたのは、
「友達が少ないのかな」
「暗くてコミュニケーションが苦手なのかな」
「単純に学校が嫌いなんだろうな」
といった、いわゆる一般的なイメージでした。
しかし、ご縁があって現・大阪府教育長である水野達朗先生のもとで「不登校復学支援」という仕事に出会い、お子さんと一緒に遊ぶメンタルフレンドという役割を担うことになりました。初めて訪問するご家庭に向かう車の中で、強い緊張を覚えていたことを今でもよく覚えています。

恩師水野達朗先生と
「ちゃんと話せるだろうか」
「いきなり嫌われたりしたらどうしよう」
そんな不安が頭の中で何度も浮かんでは消えていきました。
同席してくださった復学支援カウンセラーのN先生が、私の様子を見てこう声をかけてくれました。
「大丈夫だよ。うまく話そうとしなくていいから、辻君のありのままの姿で話してみて」
その一言で、少し肩の力が抜けたのを覚えています。
実際にお子さんに会ってみて、最初に浮かんだ言葉は、
「なんだこの良い子は」
でした。
笑顔であいさつを返し、自分のことも積極的に話してくれる。
一緒にトランプをすれば、勝てば楽しそうに笑い、負ければ悔しそうに笑う。
「次はこれやろう!」と自分から提案もしてくれる。
話を聞けば、ちゃんと友達もいる。
その姿を前に、「どうしてこの子が学校に行けていないんだろう?」と純粋に疑問が湧きました。
「笑顔で遊べる、コミュニケーションもとれる、友達もいる。
学校に通うための“能力”は全部そろっている子たちなんだよ」
「本当はみんな、学校に行きたくないわけじゃない。
行きたくても行けない子がほとんどなんだ」
N先生の言葉を聞いたとき、胸が強く締め付けられました。
「行きたくても行けない」
「誰にも見えないところで、誰か助けてと泣いている子がたくさんいる」
それが不登校の現実なのだとしたら、あまりにも理不尽で、あまりにも悲しい。
そう感じました。
「そんな状態が当たり前のように続いているなら、何とかしたい」
「少なくとも、自分が関わる子には一人で泣き続けなくていい環境をつくりたい」
今振り返ると、ある意味では手前勝手な感情だったかもしれません。
それでも、その時に湧き上がった衝動のような思いが、私が支援の道へ進むきっかけになりました。



日本の不登校児童・生徒数は、年々増加を続けています。
特にコロナ禍以降はその傾向が顕著で、2025年10月に文部科学省が公表したデータでは、不登校数は35万人と、過去最多となりました。
ただし、この数字はあくまで「年間30日以上の欠席」という定義に当てはまるお子さんだけをカウントしたものです。
教室には入れず保健室や別室に通っているお子さん、放課後のみ登校しているお子さん、登校とみなされる何らかのサービスを利用しているお子さんは含まれていません。
年間29日までの欠席であれば統計上は「不登校」とは扱われませんが、そのご家庭に登校上の課題がないとは言えません。
こうした「登校になんらかの困難を抱えている」お子さんまで含めて考えると、実際の規模は公式な数字の3〜4倍に達するのではないか、とも指摘されています。
自ら学校に向かう力を尊重することは非常に大切です。しかし、「本人がその気になるのを待つ」ことだけに頼った結果、小学生の不登校が中学・高校、そして成人期へと持ち越され、いわゆる「引きこもり」や「ニート」と呼ばれる状態につながってしまうケースも少なくありません。
「不登校が増え続ける原因は何か」と問われたとき、要因が一つでないことは言うまでもありません。そのうえで私が問題だと感じているのは、「学校に行かなくてもいい」というメッセージだけが独り歩きしやすい社会の空気です。学校に行かない選択そのものが誤りだとは考えていません。状況によっては、一時的に距離を取ることが必要な場面も確かにあります。
問題なのは、「学校に行かせてはいけない」「学校に行ってほしいと思うのは親のエゴだ」といった極端な言葉が、保護者の健全な願いまで否定してしまうことです。
本来、「学校に行く」「別の場を選ぶ」はどちらも尊重されるべき選択肢です。それにもかかわらず、「学校に戻ってほしい」と願う気持ちがまるで悪いことであるかのように扱われてしまう。この空気そのものが、支援のタイミングを遅らせ、結果として子どもと家族を追い詰める一因になっていると考えています。
RAYは、「学校に行くか・行かないか」という二項対立ではなく、「この子が将来、どのように生きていきたいのか」という軸から最適な選択を一緒に考えたいと思っています。そのうえで、「学校に戻る」という選択肢を取りたいご家庭に対して、専門的な復学支援を通じて伴走していくことが、私たちの役割だと考えています。

ペアレンツキャンプ時代セミナー講師として
本来、学校に行くか行かないかは、どちらも子どもと家庭が選びうる真っ当な選択肢です。
それにもかかわらず、
「学校に行ってほしいと思うのは親のエゴだ」
「学校に戻った結果、トラウマになったらどうするのか」
「学校に行かなくても成功した人はたくさんいる」
といった極端なメッセージが広がることで、
まるで「学校に行ってほしいと願うこと=悪いこと」であるかのような空気が生まれている――
そのこと自体に、大きな問題意識を持っています。
親御さんが「学校に行ってほしい」と願うのは、決してエゴではありません。
学校に通うことで得られる知識、経験、仲間との出会いを通して、我が子に幸せに生きてほしいと願う、ごく自然な親心です。
一方で、復学の進め方を誤れば心の傷が深くなることもありますし、逆に「行かない」状態が長く続くことで、うつ症状やその他の不調が強まっていくケースも、現場では少なくありません。
私たちは、「すべての子どもは必ず学校に行くべきだ」と主張したいわけではありません。
いじめや病気など、どうしても現在の学校環境が合わないお子さんがいることも事実ですし、そうした場合には別の居場所・学びの場が必要です。
そうではなく、勉強や給食、授業、部活、人間関係など、
人が成長していく過程で誰もがぶつかりうる「壁」に直面したとき、一時的に休むこと自体はあってよい。
ただ、そこから時間だけが過ぎてしまい、
「どう思われているか不安で、もう行けない」
「本当は行きたいのに、今さら戻れない」
という状態のまま止まってしまう――
そうした『学校に行きたくても行けない』不登校は、0にしたいと考えています。
そのために、RAYは「学校に行く」か「行かない」かを二分法で決めつけるのではなく、一人ひとりの価値観や家庭の状況に寄り添いながら、子どもと家族が納得して選び取れる進路を一緒に探していきます。

辻タカノリ(こまち先生)
RAY代表カウンセラー

・公認心理師/教育カウンセラー
・元家庭教育支援センターペアレンツキャンプ東京支部室長
・復学支援カウンセラー歴13年
・親御さん向け心理教育セミナー講師
クラリス先生
スタッフカウンセラー


・元行政心の相談室相談員/犯罪被害者支援員
・夫婦問題カウンセラー
・相談支援歴14年
