不登校になったとき最初にやるべきこと——「きっかけ」と「原因」を分けて考える
- 4月19日
- 読了時間: 9分
代表理事略歴
・関西復学支援機関にて東京支部室長を10年歴任
・(一社)不登校解決支援センターRAY代表理事
・文部科学省家庭教育支援研究委員
所持資格
・公認心理師/教育カウンセラー/家庭教育アドバイザー/復学支援カウンセラー
SNSでは『こまち先生』として活動し、総view数は100万を突破!
お子さんが学校を休み始めたとき、多くのご家庭はまず「何があったのか」を探します。友達とのトラブル。宿題や課題。先生に叱られたこと。頭痛や腹痛。微熱。どれも確かに大事です。
ただ、不登校の対応で最初に外してはいけないのは、その“きっかけ”と、“なぜそのきっかけで休むに至ったのか”という原因を分けて考えることです。
ここが曖昧なまま進むと、一度は動いてもまた止まりやすくなります。一つ解決したのにまた別の理由で休むことになった、に置き換わっていくだけ、ということが本当に多くあります。
本記事では、不登校の初期対応でなぜ「きっかけ」と「原因」を分けて見る必要があるのか、そして本当にアプローチすべき部分はどこなのかを整理していきます。
この記事でお伝えしたいこと
学校を休んだ直接の理由と、休みに至る背景は分けて考えたほうが良いこと
「きっかけ」だけを解消しても、安定登校につながらないことが多いこと
根本的な対応は、本人の性格傾向と家庭での関わり方の両方に向ける必要があること
不登校の最初は「きっかけ」に目が向きやすいです
不登校のご相談で最初に出てきやすいのは、学校を休むことになった直接の出来事です。
たとえば、
友達とのトラブルがあった
宿題や課題ができていなかった
給食が苦手だった
先生に叱られた
頭が痛い、お腹が痛い、気持ちが悪い
微熱があって休んだ
こういったものです。
これを、ここでは「きっかけ」と呼びます。学校を休むことになった直接の要因ですね。
不登校が始まると、親御さんも学校もまずはこのきっかけを解消しようとしがちです。
そこに意識が向くのは当然です。実際、初動として必要な対応もあります。
たとえば、
宿題はやらなくてもいいと学校に確認する
給食は残していいと伝えてもらう
友達トラブルに親や先生が間に入る
朝起きづらいから学校まで送迎する
こうした対応です。ここまでは、よくある流れですし、短期的には必要な場面もあります。
ただ、ここで止まってしまうと苦しくなります。
「きっかけ」を解決すれば根本的に解決する、とは限りません
ここが厄介です。きっかけだけを解消しても、学校に行けるようになるとは限りません。
仮にそのきっかけが片づいたとしても、今度は別の問題が出てくることが多いからです。
宿題をやらなくてよくなった。でも次は、友達の目が気になる。給食を残してよくなった。でも今度は、遅れている勉強が気になる。送迎で学校まで行けるようになった。でも車を降りられない。
こういう形です。
なので、見方を変えていきましょう。きっかけがあったから学校に行けなくなったというより、学校に行けない思いがあって、そこに“はしごをかけるように”きっかけが出来上がってくるケースが非常に多いのです。
ここを見誤ると、対応がずっと“対症療法”になります。その場しのぎはできるものの、根っこは残る。だからまた行けなくなる。これを繰り返します。
本当に見ていくべきは「原因」のほうです
ここでいう「原因」とは、きっかけをもとにして学校を休んでしまう、その子自身の傾向です。本人の性格傾向、と言ってもいいでしょう。
たとえば、
プライドが高い
完璧主義が強い
神経質傾向がある
嫌なことから逃げやすい
失敗を極端に恐れる
人の目を気にしやすい
こういったものです。
もちろん、不登校は本人の性格だけで起きるわけではありません。家庭との関わり方、学校環境、これまでの経験も絡みます。ただ、少なくとも「なぜそのきっかけで止まったのか」を考えるには、この原因の部分を見ないと話になりません。
宿題ができていなかった。それ自体が問題なのではなく、“できていない自分を見られるのが耐えられない”というプライドの高さが強く働いているのかもしれません。
給食が嫌だった。食べ物の問題だけではなく、“残す自分”“人と違う自分”を見られたくない気持ちが背景にあるかもしれません。
朝起きられない。睡眠だけの問題ではなく、“今日も失敗するかもしれない学校に向かうこと”そのものが重い可能性があります。
ここにこそアプローチしないと、根本的には変わっていきません。
プライドが高く完璧主義なお子さんには、何が起きやすいのか
代表的な例をひとつ挙げます。プライドが高く、完璧主義があるお子さんは、失敗を強く恐れやすいです。
失敗するくらいなら、最初からやらない。恥をかくくらいなら、挑戦しない。
このパターンは本当に多いです。
わかりやすいのは、遅刻や早退ができないケースです。
「行くなら朝からちゃんと行きたい」
「中途半端に行くくらいなら行かない」
こういう言葉が出てきます。
一見、立派に見えるかもしれません。
でも中身をよく見ると、遅れて入ることで目立つのが嫌。周りに見られるのが嫌。「なんで遅れてきたの?」と思われるのが嫌。そこに強く反応していることがあります。
つまり、完璧にできないならゼロを選ぶ。これは学校の場面でよく起きます。
こうしたケースでは、一時的に
遅刻での登校
別室登校
1時間目からではない登校
放課後登校
といった形を認めていくことがあります。「完璧じゃなくても問題ない」という経験を、現実の中で積んでもらうためです。
原因へのアプローチは、学校だけで終わりません
ここも大事です。原因への対応は、学校だけでは足りません。家庭の中でも同じです。
完璧主義やプライドの高さが強い子は、お家の中でも失敗を嫌がります。嫌な顔をする。イライラする。親に当たる。責任転嫁する。こういった形で出ることがあります。
すると親御さんは、それを見て先回りし始めます。
忘れ物がないように準備しておく
出発時間を全部管理する
行き先までの交通手段を全部確認しておく
必要な持ち物を親が揃えておく
優しさです。愛情です。でも、ここには落とし穴があります。
これを続けると、お子さんは「自分で失敗を回避する力」を学べません。結果として、うまくいかなかった時に、
「なんでちゃんとしてくれなかったの」
「こうなるってわかってたでしょ」
と親のせいにしやすくなります。
本来自分が取るべき責任を、自分で引き受ける機会が育たないからです。
親が「失敗を恐れすぎない」ことが、子どもの学びになります
たとえば、空が少し暗い。親は思いますよね。雨、降りそうだな、と。そこで、
「傘持ってきなさいよ」
と声をかける。これはよくあることです。
ただ、いつもこれをやっていると、お子さんは自分で空を見なくなります。天気予報も見ない。傘の準備もしない。だって誰かが教えてくれるからです。
時には、雨に濡れる経験も必要です。濡れて帰ってきて、初めて、
「明日は天気を見よう」「傘を準備しておこう」
という学びが生まれます。
もちろん、親御さんからするとかわいそうでしょう。濡れたら風邪をひくかもしれない。嫌な思いもする。そう思うのは自然です。
ただ私は、目の前の雨に一度濡れるかわいそうより、失敗しないまま育ち、挑戦そのものができなくなっていくもっと大きなかわいそうのほうを避けたいと考えています。
今日から家庭で意識したい3つのこと
1. きっかけだけで判断しない
何があったのかは大事です。でも、「なぜそれで休むに至ったのか」を必ずセットで見てください。きっかけと原因を分けて考える。ここが出発点です。
2. 失敗を全部先回りで防がない
親が全部整えてしまうと、子どもは自分で整える力を持てません。準備、確認、責任。どこまで本人に返せるかを考えていく必要があります。
3. 完璧でなくても動ける経験を積ませる
遅刻、途中登校、別室、放課後。100点ではなくても前に進める。そういう経験が、完璧主義の強い子には必要です。
同じようなケースに、RAYではこう関わっています
RAYでは、不登校のご相談に対して、表に出ているきっかけだけを追いません。その子の性格傾向、家庭の関わり方、学校とのやり取りを見ながら、「どこに本当の課題があるのか」を整理していきます。
特に多いのは、
きっかけにばかり対応している
親御さんが失敗を恐れすぎて先回りしている
お子さんが責任を引き受ける機会が少ない
家庭内で完璧主義やプライドの高さが温存されている
というケースです。
ここが整理されないまま「じゃあ宿題はなしで」「じゃあ送迎で」「じゃあ給食は残してOKで」と進めると、一時的には動いても、結局また別の形で止まりやすいです。
よくあるご質問
Q. きっかけを解消する対応は、やらないほうがいいのでしょうか?
そんなことはありません。必要な配慮はあります。ただし、それだけで安定登校につながると考えないことです。きっかけへの対応と、原因への対応は分けて考えたほうがいいです。
Q. うちの子が完璧主義なのかどうか、よくわかりません
ひとつの見方としては、「中途半端を極端に嫌がるかどうか」です。遅刻なら行かない。少しでも失敗しそうなら最初からやらない。人に見られる失敗を強く嫌がる。こういった傾向があるなら、完璧主義やプライドの高さが関わっている可能性があります。
Q. 失敗させるのが怖いです。親として見ていてつらいです
その感覚は自然です。ただ、全部を防ぎ続けると、あとで本人がもっと大きな場面で止まりやすくなります。小さな失敗を家庭の中で経験できることは、長い目で見ると強さにつながります。
まとめ
不登校の最初にやるべきことは、「きっかけ」と「原因」を分けて考えることです。
宿題。給食。友達。先生。体調不良。こうしたきっかけは確かにあります。でも、本当に見ていくべきなのは、なぜそのきっかけで止まったのか。その背景です。
そこに、
プライドの高さ
完璧主義
神経質傾向
失敗への強い恐怖
嫌なことから逃げやすい傾向
があるなら、そこにこそアプローチしなければ根本は変わりません。
目の前の困りごとだけを片づけ続けても、また別のきっかけが出てきます。だからこそ、表面ではなく、その奥を見る。ここを外さないことが、不登校の対応ではとても大切です。





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